きらきらしたものを集めたい。

主にジャニーズ、たまにアイドル。/絶賛事務所担進行形 → 主にK-POP、たまにジャニーズ、たまーーにアイドルへ移行→主にLDH、そこそこK-POP、たまにジャニーズ、ちょっと坂道に移行したみたい。。

「検察側の証人」めっちゃ面白かった!

ってタイトルにしてしまうくらい、面白かった。もう単純に面白かった。アガサ・クリスティが舞台戯曲として書いた作品なんだから面白くて当たり前なんだけど、それにしたって明快でよくできた面白い舞台だった。

これから見に行く上でまっさらな状態で見たい人はここから先は絶対読まないでほしい。まっさらな状態で見る方が絶対楽しい。

 

タイトルの通り、舞台のほとんどの時間が法廷でのやりとりで作られていて、本来の作品の設定としては陪審員も役者が演じるつくりらしいが、今回は舞台の観客が陪審員としてそのやりとりを"見守る"作りになっている。

小瀧さんが演じる主人公は、資産家で独り身の50代女性を殺害した容疑で逮捕起訴される若い青年レナード。容姿端麗で明るく実直に見えるが少々素直すぎる言動をする。その素直すぎる言動や行動は人に対して心を開いているように見え、不利すぎる状況証拠を持ってしても「彼はやっていない」と思わせてしまう。しかしその言葉の中に見え隠れするひどく打算的な思考、時たま見せる暴力的な言葉、冷たい目、職場でのトラブル。そこにフォーカスすると、とたんに全てが胡散臭く見える。とても小瀧望という人のまとう空気をそのまま活かした役柄として作り上げられていた。小瀧さんて甘いマスクの爽やか青年なのに生粋のボケたがりだから、慣れるまでどこまでボケだか真面目な話だか分からなくてちょっと初対面の印象が複雑になりがちだよね*1、という部分がそのまま活きてるなぁと思った。

やっぱり小瀧さんの舞台での声色の使い分け、すごく好きだなぁ。目は口ほどに、と言うけど、声は目ほどに、の人。

 

レナードの無罪を証明できる唯一の証人で、その証言が唯一の証拠となる妻、ローマイン。共産国だった東ドイツでレナードと出会い、婚姻関係をもつことでイギリスにきた女性。被告人の弁護側の証人であるはずのローマインが裁判がはじまると検察側の証人として出廷し、レナードから殺人したと聞いたと証言する。被告人を裏切ったその行動、言動にローマインに対する陪審員の心証はとても悪いものになる。その審議の後、ローマインを貶めたいと弁護士事務所を訪れる謎の女性が現れ、ローマインに男を取られ、なおかつ逆上した男により顔を傷つけられたと語る。その女性がもってきた物証がローマインの証言が虚偽である裏付けとなり、次の審議で陪審員はレナードは無罪と評決する。ローマインは虚偽の証言をしたことにより、投獄は免れない状況になる。

しかし、実は謎の女性はローマインであり、持ってきた物証こそが偽りで、始めの審議でのローマインの証言は真実、レナードは真犯人だということが評決後にローマインの自白により明かされる。

映像作品でローマインを演じる役者がローマインを貶める謎の女性を演じていれば「なぜ?」と疑問を持つが、舞台の場合、観客の多くは「複数の役を演じるのが舞台では当たり前のこと」として受け止めてしまう。その思い込みをうまく利用している作り方。そのローマインの自白が行われた後に最後のワンシーンだけ出てくる重要な女性がいるが、弁護士事務所の事務の女性と同じような年頃の役にも関わらずそのワンシーンのためだけにキャスティングされた役者が出てくる。それにより、ローマインの役者が謎の女を演じたことの意味を裏付ける。ミステリー作品として、舞台用につくられたものなんだなぁとしみじみ感じた。

ローマインこそが真の主役であるのはタイトルにある通りなんだけど、ローマインを軸に作品を見ると「当時のイギリスでは異国から来た人に対しての偏見が強かった」ということがパンフレットに書かれていた。しかし、舞台のなかで描かれるローマインには外国人であることの上に女性に対する偏見が乗っかっている。

裁判が始まる前に弁護士と会った際、冷静なローマインに対して弁護士たちは「愛が感じられない」「信じられない」と受け取った。そして素性を明かさない女性の感情的な演技に同情し、虚偽の物証となる手紙の「国を出るためにレナードを利用し、本当は活動家の男を愛している」という内容を簡単に信じた。ローマインはありのままでは簡単に信じてもらえないことを逆手にとり、自ら罪をかぶりレナードを救った。

そこにあるのは女性への偏見と外国人への偏見。作品が書かれた時代は1920年代だが、いざ現代日本で見ても、その偏見はないものにはなっていない。そう気づいて心が痛んだ。

 

とても余談だけど、最近つい科捜研の女の再放送を仕事しながら見てしまうので「マリコさんがいれば…!」みたいな気持ちになってしまった。しみじみと指紋と血液型だけで捜査していた時代の方がミステリー作品は作りやすかっただろうなぁと思う。

 

小瀧さん、ミュージカルはやらないのかなぁ。ストレートプレイでの小瀧望は間違いなく素晴らしい役者として評価されていくと思うし、これからもいい作品にであっていくんだろうということは確信がある。ミュージカルでの小瀧さんも見たいなぁという欲が生まれてしまった。

あと、検察側の証人も配信もしてほしい。

そして、とにもかくにも最後まで無事に上演できますように。

*1:オタクの早口