きらきらしたものを集めたい。

主にジャニーズ、たまにアイドル。/絶賛事務所担進行形 → 主にK-POP、たまにジャニーズ、たまーーにアイドルへ移行→主にLDH、そこそこK-POP、たまにジャニーズ、ちょっと坂道に移行したみたい。。

エレファント・マンという舞台をどう見たらいいのだろうか。

小瀧望さん主演のエレファント・マンを配信で見た。

配信日の翌日までアーカイブがあったので、翌朝に見た。

朝から見るにはヘビーであったけど、すごく見ごたえのある舞台だった。

モールスの時も思ったけど、小瀧さんは舞台が似合う。台詞の第一声から本当にしっかりと場内の空気をつかむ発声が出来る人。しっかりとした眉毛と目で表情も伝わりやすい。舞台映えする、という印象は配信でも変わらなかった。

今回の小瀧さんが演じたのは、病気により身体が極度に変形、膨張し「エレファント・マン」と呼ばれたジョン・メリック。頭は横になることが出来ないくらいに膨れ上がり、右腕、両足の異常な肥大、左腕以外のほとんどの部分が膨張と変形をして、杖なしでは歩行が困難。それを特殊メイクや装飾を伴うことなくただ体を歪ませ、顔を歪ませることで表現する。単純にその体勢で2時間半演技をするということだけでものすごいこと。そのうえで台詞はどのシーンでもしっかりと届かせていた。口を歪ませながらもはっきりと届く言葉、それが彼自身の純粋な心を感じさせてくれる。モールスの時もそうだった、小瀧さんの演じる役柄が続けてそうだっただけかもしれないけど、「純粋さ」を見せる演技がものすごく響く。でもちゃんと劇中にメリックを見世物小屋生活から救った医師トリーヴズの夢の中で普通の人間として演技するシーンでは、本来のメリックとは違う声色での演技だった。しっかりとトーンを使い分けられている。そのうえで強くストレートで純粋さを表現できるあの発声、舞台でこそあの声が活きると感じる。

 

配信を見終わってから作品についての情報を調べた。エレファント・マンと呼ばれたジョン・メリックにまつわる物語は、実際にメリック(ジョゼフ・メリック)を診ていた医師トレヴェス(作中の名前はトリーヴズ)の回想録を基に作られているということを知る。作中に投影されたメリックの写真は実際の写真であるということもWikipediaで知った。*1実在の人物の話であったこと、そしてWikipediaの詳細な記述に驚いてしまった。

見世物小屋で日銭を稼がされていた生活からロンドン病院での生活になり、上流階級の人々から面会を求められ、その度にプレゼントを貰うような生活になる。その生活になったあと見世物小屋の興行主だった人物が彼の元に来て、またビジネスを持ちかけるがメリックが拒絶する。その際に興行主は「今も昔も変わらないじゃないか」と言い捨てる。

全然違う、と言いたいが、全然違う、とも言えないのではないかと心に残った部分が、「実在のメリックの人生を戯曲化した作品である」という情報を得て、またグルクルと心のなかで大きくなってしまった。

最近、「人の人生をエンターテイメントとして消化すること」について、考える機会が多かった。

ドキュメンタリー風バラエティーのなかでのやり取りからSNSが炎上して……ということや、日韓でのサバイバルオーディション番組の乱立とか……

アイドルという職業である小瀧さんが、メリックを演じたということも含めて、すごく重く心に残った。

この作品は悲劇的に演出された感動ポルノではない。ただ、問いかけてくる作品。

実際に戯曲化された際に見せたかった主題は、演出の方の言葉通り、1880年代、世界経済の覇者として繁栄を誇っていた時代のイギリスで、メリックに向けられた「規律を守るのは自分のため、規律を守れば幸せになれる」というトリーヴズの言葉であり、それは誰の規律なのか、誰のため規律なのか、守られる幸せと奪われる自由についてを訴えるものなんだろうとは思う。*2

でもメリックの人生をエンターテイメントとして舞台や映像作品で消化していることそのものに対しての方が、ずっと重く感じてしまった。重く感じたけども、見てよかったとは思っている。小瀧さんが演じなければ私はこのエレファント・マンという舞台を知らなかったし、ジョゼフ・メリックという人のことを知ることもなかった。

 

誰かの人生に触れるということは、自分の人生に触れること、と最近誰かがTwitterで書いていたか、何かで言っていた。誰かの人生に触れる、そういう経験は必要なのは確かで、でもただ己の気持ちよさのために、人の人生を、己の気持ちのいいように操ろうとしたり、気持ちのいいようにだけ解釈して消化するのではなくいたい。そんなことを思うようになってきた。でも、まだ具体的な"正しさ"がわからない。そのわからない、という気持ちがトリーヴズの抱えた苦悩に勝手にリンクしてしまった。後味が長く続く、いい舞台だったな、と思う。