きらきらしたものを集めたい。

主にジャニーズ、たまにアイドル。/絶賛事務所担進行形 → 主にK-POP、たまにジャニーズ、たまーーにアイドルへ移行→主にLDH、そこそこK-POP、たまにジャニーズ、ちょっと坂道に移行したみたい。。

三宅健さんがつくるアートとアイドルの世界線

三宅健さんの初めてのソロツアー、NEWWW Live TOUR 2022の幕が開けた。初日を見終わった友人から「ぜっったいに見てほしい」と怒涛のLINEが届き、その友人のテンションからそれは絶対に見ないといけないものなんだろうなと感じられ、翌日の夜に友人と共にガーデンシアターに来ていた。

わたし個人は三宅さんのパフォーマンスについて知っているのは滝沢歌舞伎2016でのパフォーマンス(映像)くらい*1で、V6のライブも見たことがない。彼自身についても美意識が高いことくらいしか知らない。

丸腰で現地に行き、噂のシリコンヘッドのかわいいくまちゃんペンラを借りて席に着く。三宅さんによる影ナレで本人の口から「◯◯まではペンライトを点けないで。はい今消して~影から見てるよ~~」というご指導が入る。*2

具体的な演出、構成について書くつもりはないが、導入からもうこれまで見たことのないステージが作られていて、オープニングからあっという間に会場が三宅健の世界になった。

あまりにも光と影の絵画的なアプローチからはじまり、冒頭のブロックが「レンブラントだ…」となってしまった。こういう世界観なのか…と思っていたら、ひとつのブロックが終わるとまた全く違うアプローチのステージが始まる。テミンさんのSiriusツアーを見たときに、正面からステージを見ることが前提となるホールで作るからこその作り方で、とても演劇的だと感じたんだけど、三宅さんの作るステージは同じようにホールであることを意識した上でひとつひとつのブロックがそれぞれに違うアプローチのアート表現によるインスタレーションだと感じた。三宅さんの美術的な造詣の深さを知らなかったので「この人はどんだけアートに接してどんだけアートを体に取り込んでるんだ…」となりながら見ていた。もちろん、ブロックによってはとてもアイドル的な演出もあるんだけど、それもまたインスタレーションと感じる。ブロックごとに色々なアーティストによる三宅健を題材としたインスタレーションを見せてもらっている感覚になり、「三宅健ビエンナーレ…」って感想になってしまい、それだと2年に1度しか開催されなくなってしまうんだけど、それくらい大型の芸術祭のようだった。

MCに入ればセンターに椅子*3を置き、座って自由に語る。印象深かったのは当日売り切れてしまったかわいいクマのペンライトの話。「3800円だっけ?高いよね。でも最初知り合いのアーティストに頼もうと思ってたの。そしたら余裕で1万越えるよって言われて。こいつほっといたら1万円のペンライト作るぞってなって、慌ててスタッフがこのクマのペンラを提案されたの。まだ誰もやってないです!って」とニコニコと語る。ほっといたら1万円のペンライトを作るぞ、とスタッフに思われるくらいには、本気でアーティストの方と作るつもりだったんだと思う。

そこまでのパフォーマンスとMCでのこの話題で、三宅さんはアートが生活のなかにある人なんだなと感動した。自分にとってはアートは展示されているところに出向いて見るものでしかないのだけど、三宅さんは日常のなかにアートがあって、アートに触れて生活をしている人だから自分の中からアートが作れて、このステージを作れるんだろうなぁと。"美意識が高い"という言葉による軽い認識が、いかに軽薄な捉え方であるかということも思い知らされる。

MCのあとのブロックも、ここでこういう演出をするのか…!ここでそういう使い方…!とか色々な新鮮さを感じつつ、MCでのスタンスにしても、とてもストレートにメッセージを伝える楽曲も、やっぱり本人の中にはアイドルとしての確たるものがある。

本編の終わり方、そしてアンコールへの流れを含めて新しい形だった。

とにかく全編通して影使いがすごい。照明の使い方、という以上に影の使い方。レンブラントを光と闇の魔術師とか光と影の魔術師とか呼ぶけれど、三宅さんもまさにそう。影使いの三宅。レンブラント三宅。それなりにコンサートを見てきて、コンサートでステージで影を大きく使う、ステージの光量を極端に絞る演出を行うことはかなり勇気がいる演出だと思っている。画がもつ自信と集中してくれる観客への信頼感がなくては作れない。三宅さんはそれが出来る人。

アートアートと書き連ねているけれど、三宅さんがインスピレーションを得ているのは、アートに限らず、ファッション、いろいろなエンターテイメントだと思う。舞台でもミュージカル、ストレートプレイ、他にも色々あるんだろう。いろんな物を見て、消化して、自分の体に取り込んで、そしてファンにも共有をしてくれる。

コンサート終わりに感想を読み漁っていたら今年の5月から東京新聞で「三宅健とめぐるアート」という連載を持っていることを知る。あぁ、この人のアウトプットはいろんなことが繋がっているんだなと納得する。自分がいいと思ったものを共有してくれて一緒に楽しもうとしてくれる人なんだろうと思う。三宅さんのアイドル感として、寄り添い方として、感性を共有してくれる人なんだろう。

グループからソロになって、明確に本人の思うアイドル感での活動になり、オファーを受けたものをしっかりとこなすものと、自らの感性で作るものをしっかりと両立されている。長い年月積み重ねてきたファンへの信頼を含めて、きっと豊かな世界を彼のペースで作っていくんだろう。三宅健にしか作れない素晴らしいエンターテイメントの形、きっとこれまでのジャニーズにない色々な方のセンスと共に形づくられていくのを期待してしまう。

 

洗練され完成されたすごいものを見て、自分の琴線を鷲掴みされてブンブン揺すられて心の底からすごいと興奮することはとても好きだ。そういう時にすごいすごいと言葉が溢れてくるのが楽しい。めちゃめちゃ楽しい。

だけど、それと同時に自分のなかで、荒削りの状態から洗練されていく過程のエンターテイメントでしか得られない高揚感があり、自分にとってはそれが"きらきらしたもの"で、1番心の栄養になるんだよなということを実感する。ただ、いろいろなアプローチで洗練されていく過程を見たいのであって、過度な労働で消耗されていくのは見たくない。各々の表現を掴んで磨いていくぞというエネルギーが削られるような状況は望んでない。

そんな自分の嗜好性にまで思いが巡ってしまうぐらい、すごい公演だった。三宅健さん、どうぞ健やかに、これからも沢山のものをインプットして沢山のものをアウトプットしてください。

*1:そのDVDを見て友人は三宅さんの沼に落ちた

*2:しっかりと「この部分まで」という指導に対してそれより前から点灯させる人とそれが少し伝染する感じが興味深かった

*3:どなたかの作品の私物だと思う