きらきらしたものを集めたい。

主にジャニーズ、たまにアイドル。/絶賛事務所担進行形 → 主にK-POP、たまにジャニーズ、たまーーにアイドルへ移行→主にLDH、そこそこK-POP、たまにジャニーズ、ちょっと坂道に移行したみたい。。

映像で「マシーン日記」を観劇した話。

シアターコクーンで上演されたマシーン日記、横山さんの舞台を初めて見られると思って楽しみにしていたら「キャスト・スタッフ共に全力で準備を進めて参りましたが、感染症対策を講じながら、予定通りの内容と稽古期間で、2月3日(水)に幕をあけることが総合的に困難であるという結論に至りました。」というお知らせ。追加公演はなし。

ちょうど中止となった公演だったため、残念……となっていたところ、代替イベントとして、グローブ座での"上映会"が開催されることになり、かなり貴重な経験をしてきた。

 

準備が間に合わず初日から数公演中止という判断、なかなかないことだと思う。コロナ感染により主役の稽古がしきれなかったとしても、それだけだったとしたら無理矢理でも幕を開けてしまうだろう。でもそれが出来なかった、それを選択しなかった理由は舞台の映像を見てわかった。

横山さん演じるミチオが鎖に繋がれて暮らす狭いプレハブ小屋としての円形のセンターステージ、そこにはそこでの生活を表現するための沢山の小道具がぐるりと円の端に並んでいる。そしてそのセンターステージを四角く囲む外周のステージはプレハブ小屋の外であり工場の敷地内を表現したもので、スイッチや池を表現した機構がある。センターステージへの花道となる部分にもせりあがりの機構がある。

狭い舞台上に沢山の機構と電化製品、時には金属を切断するグラインダーが実際に舞台上で使用される。そういうなかで、キャスト4人は感情的に立ち回りを行う。ひとりずつではなく、2人、3人、全員での立ち回りも多い。加減を間違えれば簡単に怪我をする。機構が壊れる。加減を間違えれば事故になるが、加減をしたらまるで面白くない演技になる。「こりゃ準備万全でなければ上演できないな」と見ながらしみじみ思った。コクーンは3日前からしか建て込みができないらしい。そういうなかで小さいながら機構が詰まったステージは建て込みにも時間がかかっただろう。現地でのリハーサルを含めて、完全でなければ無理だという判断をしてくれてよかったと思う。

 

アフタートークで横山さんが「どうでした?すごいぶっとんだ世界観ですよね?これ理解して笑える皆さんが1番おかしいんじゃないかと思いますけど」*1とカマして笑った客席に対して「おぉ笑った」と嬉しそうにしていたけど、何割かに本音もあるんだろうと思う。横山さんはあのぶっ壊れた世界観に対して理解して入り込める人かといえばNOで、ミチオと一体化しているわけではなかっただろうなと思う。でも、それがすごくよくて、あの4人のなかでも"浮いてる"存在であることがよかった。横山さんは基本的に内と外に対しての温度差がある。家族や仲間に対しての身を委ねる形での信頼感と、他人様に対しての遠くから眺めるような距離感。多くの場合、自らその距離を積極的に詰めようとはしない。舞台のなかでのミチオの身内の人間との関係性における流され方、振り回され方、外の者への警戒心*2は横山さんの人柄がよく出ていたように思う。あの世界観のサブカル的なノリに対しての警戒心を抱きながら奮闘する横山さんが主役であることがとてもよかった。

たぶん丸山さんはあの世界観、あの登場人物たちをある程度理解を出来る人だと勝手に思っていて、丸山さんがミチオをやったらもっとドロッとした欲が出る作品になって、それはそれで面白いだろうなぁと思う。

 

ただ、あの舞台の主役は森川葵だった。だけど、クレジットとして主役ではない、それがサチコ。ワイルドスピード森川*3の企画でその集中力が常人でないことは分かっていたけど、想像以上にエネルギーの塊だった。ハイカロリーの演技を軽妙にこなして、最後に爆発する。圧倒的なパワーがありながら、最後まで重さがない。疲労からくる重力がない。サチコは学生時代から溜めてきた鬱屈が爆発して瞬間的に主役となった自分に酔いしれ、そしてそのまま首をへし折られて命尽きる。命が尽きて横たわる姿はそれまでのエネルギーをまるで感じさせない人形のようなのに存在感がものすごい。エネルギーを爆発させたあとに人形のように崩れて倒れている姿勢を5分10分継続するだけだってすごいこと。しかしカーテンコールでは軽やかな笑顔を見せている。表現を選ばず言えばバケモノだな、と思う。生で森川葵の演技を体感したかった……

大倉孝二さんもテレビで見る印象とはかなり違う印象で、187cmという高身長の圧がかなりあった。映像と変わらないニュートラルな演技から入ってどんどんと狂気が増していくグラデーションが凄かった。舞台の声量でニュートラルなテンションでの演技をベースでやれるのも凄いこと。

登場シーンからずっと一貫してテンション変わらずネジがぶっ飛んでる役柄のケイコを演じた秋山菜津子さんが舞台の土台という感じだった。芯の通ったブレのない狂気。元々はこのケイコを主役に置き、片桐はいりさんが演じるために松尾スズキが作った作品と知ってなるほどそれはすごい…ってなってしまった。

 

松尾スズキのネジの飛んだ世界観、私は映画「恋の渦」くらいしかちゃんと触れたことがないんだけど、恋の渦のノリもまぁ同じようなものだった気がする。いびつな己の欲求を愛情としてぶつけ合う人たち。衝動を制御することのない人たち。時期が時期なら腹を抱えて痛快だと思って楽しんだのかもしれない。ただ現実的には、世界観に対してはただただそのサブカルなノリをひんやりとした感情で鑑賞した。ただ、その狂気はすぐそこにあるような気もすることに対してもひんやりとしていた。大きな機械の歯車がひとつでも噛み合わなくなる時、全てが止まってしまうような、全てのパーツが崩れていく瞬間にどうしようもなくて笑いが込み上げてくるような感覚。

 

アフタートークとして登壇した横山さんは、いつもの舞台下手に立ち、自分で決めた15分間をひとりで話してくれた。軽く流した金髪に、細いフレームのメガネ、チャコールグレーのチェックのセットアップにタートルネックでそこに立つ横山さんはまぁ本当に美しい人だな…としみじみしてしまった。

自分のコロナ感染によって間に合わなくなってしまったという謝罪から、この場を設けてもらうために、ジャニーズ事務所をはじめ、Bunkamuraにもかなり力を尽くしてもらい、グローブ座を含めて沢山の人の協力で実現したことの感謝の言葉が続いた。尽力はしたけれども、ファミリークラブで購入してくれた人しかこの場に呼べかったことが申し訳ないという言葉もあった。

「今は…1月でしたっけ?」と、1月からの多忙さを感じさせながら、収録日が2/10であること、最後の方の公演は6分くらい長くなっていた話、恥ずかしくて映像は見ていない話、メンバー全員が見てくれたことが嬉しいという話、この立ち位置(コンサートのMC位置)が落ち着く話、ひとりで話すのは難しい話、打ち合わせは沢山している話、年内にアルバムとドームツアーをどうにかやりたいと思っているという話、村上さんもボイトレ始めるっぽいよって話、インスタは大倉さんが本当に頑張ってくれてるという話、インスタのリールとか見て嵐があんなにいろんなことしてたの初めて知ったから自分たちも頑張らんとと思った話、とか、ざっくりとそんな感じ。終始穏やかな口調で話してくれた。

 

横山さんは、40歳を目の前にしても未だ圧倒的に成長期を感じさせてくれる、素直に取り組み吸収し続けられる本当にすごい人。京都の公演も怪我なく無事終わることを祈りながら、またひとつ大きな経験値を得た横山さんの2021年が楽しみだなと思う。

*1:的なニュアンス

*2:学生時代に浮いていたと感じる距離感はその自らの警戒から来ると思う。

*3:https://m.crank-in.net/interview/79098/1